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The Book Life

人生は、旅である!

モダンタイムス(上)(下)/伊坂幸太郎

大学時代になんとなく手に取った伊坂幸太郎の本。

そこからどっぷりはまり、今では前作読破してしまった私。

 

その中でも特に印象に残り、社会人になり読み返してまたドキドキしてしまった本がこちら。

 

「モダンタイムス」

 

「魔王」という本の続編ですね。魔王から50年経った世界が描かれています。

魔王では、ファシズムvs個人が描かれていましたが・・・

 

この本のテーマは

大きな力(システム)VS個人。

 

どうすることもできない、強大な仕組み(システム)を相手に、翻弄される主人公の話です。

「実家に忘れてきました。

  何を?勇気を。」

こんな文章から始まる、モダンタイムス。

来た来た。伊坂ワールド~!!!と、思わずにはいられない入り方ですね。

 

さて、主人公が生きる世界は、今から100年後の世界。

システムエンジニアの渡辺のもとにとある会社からの案件が舞い込んでくる。

100年後も、システムエンジニアとか、プログラマーって存在しているのですね~。

 

ここから一つのキーとなってくるのが「検索」。

あるキーワードを検索した人たちが次々におかしな事件に巻き込まれ・・・

最後には国家単位の強大な力と対峙する、そんな話です。

 

「政治も経済も、人の気分や善悪も、全部大きなシステムに乗っているだけだ」(モダンタイムス 下)

 

「お前はシステムを設計するシステムエンジニアだ。それに比べて、世の中を覆うシステムには、システムエンジニアが存在しない。誰が作ったものではないんだよ。独裁者はいない。ただ、いつの間にか出来上がったんだ」(モダンタイムス 下)

 

伊坂はよく、「強大な力」をぼんやりと本に埋め込むことが多いですけど、今回はかっちりはめてきましたね~。

 

さて、伊坂ワールド全開で創造性あふれる世界と、現実をうまく混ぜ合わせている小説となっています。

現実世界にある、おかしな点を、誇張してフィクションの世界に埋め込み、勇気のある主人公を以って訴えかける。

私が伊坂幸太郎を好きな理由の一つです。

 

今回のモダンタイムスでは「悪者はいない」という結論に至ります。

最終的に主人公の渡辺たちは、諸悪の根源である「ゴッシュ」という会社にたどりつきますが、そこでは普通にパソコンをうち仕事をしている会社員たち、そして受付嬢がいます。

 

ここで主人公渡辺はこう思うわけです。

 

世の中は、仕事で出来上がっている。

利益を追求し、効率化を目指したあらゆる仕事が、川のように自分たちの周りを流れている。

私はただ川の氾濫の中で立ち尽くすだけだ。

悪者がいない。そのことははっきりとしていた。

受付嬢の女性をちらっと見やる。自分たちが悪事に加担しているとは自覚していないだろう。ここで彼らが行った作業が直接的に、誰かを痛めつけるわけではない。

何段階もの「仕事のリレー」を経て誰かに危害が及ぶかもしれないというだけだ。

 

 

。。。。このやり場のない気持ち!世のはかなさ!

まさに、伊坂ワールドですね。

渡辺の妻が、こういいます。

 

「仕事であっても、自分のやる事にはそれなりの覚悟が必要で、悪いことをするならもだえ苦しむべきだ。」

 

妻・佳世子、かっけぇ。

 

ちなみに、今回この小説では、井坂という小説作家がでてきます。

本人曰く、名前をつけるのが面倒ということだったのですが、小説作家として伝えたいことがあったのではないかな〜と。

 

「作家の真意は3割しか伝わらない。」と言葉を残しているのだが、

あぁ、小説作家も読者に伝えたい何かがあるんだな、やはり。。なんて思ったり。

 

「俺はな、小説で世界を変えられると思ってたんだよ、昔はな。」中略「世界を変えるってのは、ただの表現だ。俺が言いたいのは、大勢の人間に何かを行動させるような小説を書きたかったってことだ。」中略「小説はな、一人一人の人間の身体に沁みていくだけだ。」

 

と、あるように、きっと小説を書いてそこから伝えたいメッセージを込めても、それで人を突き動かし、世界を変えるということは難しい。と伊坂は思っているのではないかと。

 

でも最後に

 

「だから考えを変えた。1人くらいに。小説で世界なんて変らんねぇ。逆転の発想だ。届くかも。どこかの誰か、1人。」

 

と物語のキャラクター、井坂は言い残してます。

 

改めて、小説家は(少なくとも伊坂幸太郎は)、小説を通して読者に伝えたい何かがあるのだなと感じました。

 

とくに、こんかいのモダンタイムスという小説では

 

悪いことっていうのは、別の人にとって良いことだったりする。

何が正しいことなんてあんまりわからない。

(だから、考え抜くべきであり、自分が行うことに責任と正義を持つべきだ)

 

なんてことを伝えたかったのではないかなと。

 

チャップリンの映画が多く引用されていて、政治的、社会的にでっかい敵に挑む、平凡な主人公。

 

なんにせよ、勇気を持って常識を常識と思わずに。

 

きっと読めば読むほど深みにはまる。

それが伊坂幸太郎のモダンタイムスです。

 

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